
電気代高騰の影響で、ビルメンは単なる設備管理ではなく、省エネ運用やエネルギーコスト管理まで求められるようになっています。
近年、電気料金の高騰が続いています。ニュースで「燃料費調整」「市場価格」「再エネ賦課金」などの言葉を見かける機会も増え、建物の運用コストは年々シビアになってきました。
私たちビルメン(設備管理)は、日々電気使用量を検針し、そのデータをパソコンへ入力して月ごとの使用量や年間使用量を管理しています。会議では、
「皆さんが節電に協力してくれたおかげで、昨年より〇%削減できました」
という報告が行われることがあります。しかし、実際に電気料金を確認すると、
「使用量は減ったのに、電気代は上がっている」
ということも珍しくありません。私自身も、節電の成果が出ているにもかかわらず料金が上がっているのを見て驚いた経験があります。
この記事では、「電気代高騰でビルメンが受ける影響」と、建物の裏側で行われている「見えない省エネの工夫」を、現場目線でまとめます。
📌 先に結論(この記事の要点)
- 電気代は「使用量(kWh)」だけでなく、単価や契約電力(デマンド)の影響で上がることがある
- ビルメンの省エネは、照明・空調だけでなく共用部の運用や熱源の組み合わせまで含めて考える
- 省エネは大事だが、快適性・安全(熱中症など)とのバランスが必須
- エネルギー価格が動くほど、設備管理は「動かす」だけでなく運用判断の比重が増える
電気代高騰でビルメンが受ける影響(使用量は減ったのに高い理由)
電気代が上がると、設備管理の現場では次のような影響が出やすくなります。
- 「なぜ高いのか?」を説明する場面が増える(会議・報告・テナント対応)
- 省エネ要望が増える(運転時間短縮、設定温度見直し、点灯時間見直し)
- 熱源や空調運用の判断が難しくなる(電気・ガス単価の変動)
- 節電しすぎると快適性が落ち、クレームや体調不良リスクが上がる
特に混乱しやすいのが、「使用量(kWh)は減ったのに電気代が上がる」現象です。これは、単価の上昇だけでなく、契約形態によってはデマンド(契約電力)が効いてくることもあります。
- 電力量単価が上がった(同じ使用量でも高い)
- 燃料費調整などで変動が大きい
- ピーク電力(デマンド)を踏んで契約電力が上がった/基本料金が重い
- 運用変更で「一部の時間帯に負荷が集中」してピークが上がった
つまり、節電の成果が出ていても「料金」という結果に結びつかないことがあり、現場は説明と調整の負担が増えます。

※「使用量は減ったのに電気代が上がる」現象は、単価や契約電力の影響が重なると起こりやすいです。
ビルメンが行う節電対策(見える省エネ)
ビルでは様々な方法で省エネに取り組んでいます。ここでは代表的なものを整理します。
照明のLED化
従来の蛍光灯や水銀灯をLED照明へ更新することで、消費電力を削減できます。現在では多くの建物でLED化が進められています。
ただし、LED化は「電気代が下がる」だけでなく、交換頻度が減って保全工数が下がる、照度設計を見直せるなど副次効果もあります。
ビルマルチエアコンの導入
ビルマルチエアコンは、1台の室外機に複数の室内機を接続できる空調システムです。各部屋ごとに温度調整ができるため、必要な場所だけを効率よく空調できます。建物によっては冷房と暖房を同時に運転できるタイプもあり、省エネ性能にも優れています。

※空調の更新は省エネ効果が大きい一方、運用ルール(設定温度・稼働時間)が揃っていないと効果が出にくいこともあります。
テナントによる節電協力
事務所では、例えば次のような取り組みが行われます。
- 使用していない部屋の空調停止
- 昼休み中の消灯
- 不要なOA機器の電源オフ
こうした積み重ねが大きな節電につながります。現場としては「お願いする」だけでなく、協力しやすいルールや運用(貼り紙、時間帯運用、管理方法)を作ることも重要です。

※テナント協力は「お願い」だけでなく、分かりやすい掲示・ルール化で継続しやすくなります。
共用部の運転見直し(地味だけど効く省エネ)
共用部は「誰かが使うかもしれない」ため止めにくい一方、広い面積を持つ建物では効果が大きいことがあります。例えば、特定のフロアが使用されていない場合は、
- 廊下照明
- エレベーターホールの空調
などを停止することで消費電力を抑えられます。

※共用部は面積が大きい分、運用見直しで効きやすい反面「安全・防犯・クレーム」もセットで考える必要があります。
「止めれば良い」だけでなく、保安・防犯・導線の安全(転倒)・クレーム・消防の考え方など、別の要件が絡みます。ビルメンの省エネは“現場調整”がセットです。
熱源機器の運用が重要(吸収式と空冷チラーの使い分け)

※熱源は「何を動かすか」で電気・ガスの比率やデマンドへの影響が変わります。
大規模な建物では、エアハンドリングユニット(AHU)によって館内へ冷暖房を供給していることがあります。その際に重要となるのが熱源機器の運用です。
代表的なものとして、
- 吸収式冷温水発生器(都市ガスを利用することが多い)
- 空冷チラー(電気を利用)
があります。
空冷チラーは便利な設備ですが、使用状況によっては消費電力が増加し、契約電力(デマンド)へ影響する場合があります。
私が勤務していた現場では、エネルギー管理士が選任されていました。ある時、空冷チラーの運転時間が長くなっていたため相談したところ、
「電気料金とガス料金のバランスを考えて、吸収式冷温水発生器を中心に運用しよう」
という指示を受けたことがあります。
設備管理では、単純に設備を動かすだけでなく、エネルギーコストも考えながら運用することが重要だと感じました。
- 「電気を減らす」ためにチラー運用を変えると、ガスが増えてトータルが読みにくい
- 外気条件・負荷・時間帯で“どちらが得か”が変わる
- 契約形態(基本料金が重い)だと、ピーク対策が特に重要になる
省エネだけでは解決できない現実(電気もガスも上がる)
近年は電気料金だけでなく、ガス料金も上昇する場面があります。国際情勢や燃料価格の変動によって、どちらのエネルギーも高騰する可能性があります。
そのため、「節電したから安心」というわけではなく、設備管理者は常に最適な運用方法を考え続ける必要があります。
ここが難しいところで、省エネは「やったら終わり」ではなく、状況が変わるほど“答えも変わる”仕事になります。
快適性とのバランス(省エネでクレーム・熱中症は本末転倒)
省エネを追求することは重要ですが、建物利用者の快適性を犠牲にしてはいけません。
私も「もっと省エネできるのではないか」と考えて運転を見直そうとしたことがあります。しかし上司から、
「温度管理もしっかり行わないと、熱中症になる人が出るかもしれない。省エネも大事だが、快適性とのバランスを考えよう」
と言われたことがあります。確かに、利用者が快適に過ごせなければ建物の価値は下がってしまいます。
ビルメンの省エネは「機械を止める」ことではなく、快適性を守りながら、ムダを削る発想が大切だと感じます。
ビルメンが“見えないところ”でやっている工夫(具体例)
最後に、ビルメンが見えないところで行っている“工夫”を、イメージしやすい形でまとめます(建物や契約範囲によってできることは違います)。
- 検針データの見える化(月次だけでなく、前年差・季節要因・イベント要因を整理)
- ピーク時間帯の意識(負荷が重なる時間帯を把握し、起動タイミングをズラす等)
- 空調の“効きすぎ”を潰す(設定・風量・運用のムラを減らして無駄運転を減らす)
- 共用部のタイマー・スケジュールの見直し(点灯・空調・換気など)
- 熱源の運用を見直す(空冷チラー中心か、吸収式中心か、負荷と単価で判断)
- テナントと合意形成(節電ルールを“押し付け”にせず、現場に合う形にする)
- クレーム予防(快適性を落としすぎない温度管理、熱中症リスクの共有)
設備が同じでも、運用と管理でコストは変わります。ビルメンの仕事は「設備を動かす」から「建物の価値を保ちながら、コストを最適化する」方向へ広がっていると感じます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 節電しているのに、なぜ電気代が上がるの?
単価が上がっている場合、使用量(kWh)が減っても料金が上がることがあります。また契約形態によっては、ピーク電力(デマンド)が効いて基本料金が重くなることもあります。
Q2. ビルメンは電気代高騰で何が大変になる?
説明責任が増えることと、運用判断が難しくなることです。省エネをやりすぎると快適性が落ちてクレームや体調不良リスクが上がるため、バランス調整が必要になります。
Q3. 空冷チラーと吸収式は、どちらが省エネ?
建物の条件・運転状況・単価・契約形態で変わります。現場では「どちらが得か」を固定せず、状況に応じて運用を見直す発想が重要になります。
Q4. 節電で一番効果が出やすいのはどこ?
建物によりますが、共用部の運転見直しや熱源運用(空調の根っこ)が効くケースがあります。ただし安全・快適性・法令要件が絡むので、無理に止めるのではなく「ムダを潰す」方向がおすすめです。
まとめ
電気代高騰の時代、ビルメンの仕事は設備を動かすだけではありません。
- 電気使用量の管理(検針・集計・分析)
- 熱源機器の運用(チラー・吸収式などの使い分け)
- 節電対策の実施(照明・共用部・テナント協力)
- 利用者の快適性確保(省エネと安全のバランス)
など、多くのことを考えながら建物を支えています。電気料金が高騰している今だからこそ、設備管理員は見えないところで「省エネ」と「快適性」の両立に取り組んでいます。